2016年3月9日水曜日
「歌のこころ」を読んで      春日井市  吉澤悠紀子

清水富美子氏の御本を拝読し、大変勉強になり読み進むうちに次はどんな
歌かしらと、とても興味深く面白く拝読した。

 幼い頃から口ずさんできた叙情歌・唱歌・童謡・子守唄など歌うといつもそ
の情景が目に浮かび懐かしさでいっぱいになる。

 「春の小川」「花」「夏の思い出」「赤トンボ」「ちいさい秋みつけた」「もみの
木」「雪山賛歌」など、何れも作詞されたその時代背景、経緯が書かれてい
て、この本によって、曲がより良く理解できてこれからもっと情感を込めて歌
おうと思った。

 大好きな「浜辺の歌」「あしたはまべをさまよえば」、寄せては返す波のよ
うに美しいメロディー、歌詞の言葉の意味やロマンチックな色彩を持ついろ
いろな作詞者のエピソードがあったことを初めて知った。

 また「富士の山」「頭を雲の上に出し 四方の山を見下ろして」日本的な情
緒にあふれ、雄大な富士山を表現した名曲である。この曲は長年作詞者不
詳だったが、近年になり明治時代の児童文学作家の巌谷小波(イワヤサザ
ナミ)と判明し驚き余計に親しみを持った。

 特に「わらべうた」子供時代に「かごめかごめ」「花いちもんめ」など小学生
の頃、仲の良い友達と盛んに遊んだものだが、地方により変え唄があったり
おもしろいなと思った。 

なかでも印象に残ったのは「ずいずいずっころばし」。発祥の地は今の
千葉県の辺りというがサトイモの茎を干したものを「ずいき」と呼び、これが
冒頭に出てくる「ずいずい」の語源になったらしい。
当時は、胡麻味噌を付けたずいきを食べたという。

 江戸時代、三代将軍家光の頃から幕末までの間、ずっと続けられていた
「お茶壺道中」は京都の宇治で採れた新茶を茶壺に収め、はるばる江戸
まで運ぶ大名行列だった。
 唄の意味はお茶壺が来たら急いで家の中に入り、戸をぴしゃんと閉め、
味噌を付けたずいきでも食べて静かにしていなさい、というものだ。

 武士の時代、平民の地位は低く、お上は平民から搾取する。そんな権力
者に対する不満や批判といったものを、人々は様々な「わらべうた」に託し、
唄って笑いとばして日々を過ごしていたという。

 こんな庶民の深い嘆き、悲しみの事実を全く知らずに歌っていた「童謡・
わらべうた」,謎が解けた気がして改めて愛着を感じた。

 子を想い、家族を想う歌「真白き富士の根」は、七里ケ浜海岸で逗子開成
中学遭難死の悲劇の鎮魂歌である。
悲しい人生の悲哀、涙なしには歌えない歌である。

人生を語る歌「からたちの花」「待ちぼうけ」「荒城の月」・愛すること・恋する
ことの歌・「さくら貝の歌」「平城山」。反戦の誓いでは「長崎の鐘」など、
どの曲も私の大好きな名曲ばかりで、語り出せばきりがない。

 正にそれぞれの人の人生ほどドラマの連続はない。惨劇・事故・失恋・
病気など尊い人生経験からの心の底から湧き上がって生まれ出る歌の
数々は、本当に歌う者、聴く者の魂を揺さぶられ、人の心を打つものであろう。

素晴らしい御本に巡り合えて感動し、内容が分かり易くていねいに解説され
感謝でいっぱいである。一人でも多くの方々に読んでいただきたい一冊である。




 
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