2016年3月24日木曜日
山科の老猿、猪に襲われる!   京都市 坂田晃司

待合室通信の皆さん、こんばんは。

春はあけぼの、当方、毎朝5kmの早朝散歩中に猪に襲われました。NHKテレビの正午のニュースの関西ニュースの冒頭、事故が放映されました。ケガをした当方ともう一人の男性は救急車で病院へ搬送されたあとだったので幸い映像では老醜をさらすことを免れたのですが、やっぱり山科は田舎だなぁなんて思いながら軽くニュースを観られた方もおられたと思います。

これまで、日の出前や日没後に琵琶湖疎水べりの遊歩道で猪の姿そのものや猪が夜、畑のように堀り起こした跡をよく見かけており、気をつけなければと思ってはいたのですが、まさか自分が襲われるとは!

襲われた場所は、コースが疎水べりの遊歩道から離れわが町内に入る入口の、両側が石垣の、狭い道路でした。町内へ迷い込んだあと、山へ帰ろうとしていた体長1mぐらいの雄の猪と鉢合わせ。老骨を侮ってか、ゆっくり当方へ向かって近づいてきます。当方、逃げ場を失い、足に噛みつこうとして近づいた猪の顔を脚蹴りにしました。これにひるむどころか、猪公は押し返しても惜し返しも執拗に当方の脚を狙って噛みついてきました。「猪突猛進」とは違うじゃないかと一瞬思ったほどです。このあたりまでは気持ちの余裕があったのですが、猪公の執拗な頭突き攻撃に、当方だんだんと息が切れ、脚がもつれてきました。そのうちに、とうとうもんどり打って尻もちをつき、おお向けに倒れてしまいました。猪公の顔が迫ってきます。そこではじめて大声をあげ、助けを求めました。ちょうどそのとき、いつも散歩のとき顔を合わせる年配の男性が来合わせ、猪公の腹をど突きました。当方、間一髪で助かった。息をつなぎ、体勢を整えて、近くにあったビニール製の旗竿を手にするや、もう一人の男性に馬乗りになりかかった猪公に後ろから襲い掛かりました。戦闘開始からすでに10分余、騒ぎに気付いた近所の皆さんが玄関から顔を出し、門扉を開けて、ふたりを中に引きずり込み、素早く扉を閉めると、追ってきた猪公はあきらめて疎水の方へ悠然と姿を消しました(集団安全保障の効果)。

寝技、立ち技、格闘中は気が付かなかったのですが、ズボンは鮮血で染まり、ところどころ裂けています。生ぬるいものが脛のあたりを下っているのに気が付きました。興奮しているせいか、痛みはまったく感じません。近所のひとがパトカーと救急車を呼んでくれたとみえ、サイレンを鳴らしてすぐにやってきました。

病院で救急措置を受け、レントゲン撮影などの検査の結果、骨折はなく、傷もそれほど深いものはありませんでした。ただ、野生動物に噛まれると傷口から黴菌が入り、破傷風などの感染が怖いので、その手当を十分にしてもらい、帰宅しました。帰宅した途端、民放のテレビ社が次々と取材に押しかけてきました。山科疎水は桜花の季節をひかえ京都の観光スポットのひとつでもあることから、関係者(特に子供が危ない)の注意を喚起する意味もあると愚考し、当方の老醜を撮影しないことを条件に、事故の状況説明には応じました。

人間長生きすると、いろんな目に会います。また、人間が安心して暮せる場所はもうどこにもない、という現実を思い知らされました。老骨にとっては武勇伝には違いありませんが、実に冴えない武勇伝でした。

皆さ、身辺にはくれぐれもお気をつけ遊ばせ。



 
Template Design: © 2007 Envy Inc.